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2008年10月18日 (土)

個人制作出身の吉浦康裕監督が切り拓くアニメの未来

Yahoo!動画で無料配信中のオリジナルアニメ作品「イヴの時間」が私の琴線に触れまくって大変なことになっているシリーズの第二弾です。

第一弾の記事はこちら
「イヴの時間」と「電脳コイル」に共通するSFの進化

ということで、作品の世界観の生々しさの秘密について「電脳コイル」とからめて考察した昨日につづいて、今日は監督の吉浦康裕監督がデジスタ出身で個人制作アニメ出身で、3DCGによる省力化とか色々とスゴくてアニメの未来を切り拓くに違いないという話です。

衝撃その二
「デジスタ出身・吉浦康裕監督Σ( ゚Д゚) スッ、スゲー!!」

吉浦康裕監督のプロフィールを見てとりあえず驚いたのが、その若さです!

スタジオ・リッカ(六花)のプロフィールより引用

■自己紹介
○吉浦康裕(よしうらやすひろ)
○アニメーション監督
○あと
脚本・演出・3DCG・撮影・編集とかも
○他にもデザイン・企画etc...諸々何でもやります
○現在は都内某所に潜伏中

■経歴
 1980年生まれ。故郷は北海道、育ちは福岡。九州芸術工科大学(現九州大学芸術工学部)にて芸術工学を専攻。平成15年3月、同大学卒業。
 大学時代にアニメーション制作を開始し、作品を国内外で発表。卒業後は福岡にてフリーでショートアニメーション制作を請け負った後、本格的な次回作を制作。2006年にOVA『ペイル・コクーン』を発売。その後、東京に移住。現在はアニメ業界の仕事を請けつつ、新作アニメ『イヴの時間』を制作中。

ちなみに、中京テレビのウキ→ビジュという番組のサイトからの引用だとこんな感じ。

1980年生まれ。
九州芸術工科大学(現・九州大学芸術工学部)にて芸術工学を専攻。平成15年3月同大学卒業。大学時代にアニメ制作を開始し、作品がNHK関係の番組に取 り上げられたことをきっかけに、作品を国内外のコンペに出品。卒業後はフリーでショートアニメーション制作を請け負った後、本格的な次作を制作。2006 年1月に、初DVD作品『ペイル・コクーン』を発売。今後も色々計画中。ジャパンデジタルアニメーションフェスティバル等数々のコンテストで高い評価を受 けている。2005年、第18回東京国際映画祭animetics TIFFにて最新作「ペイル・コクーン」が招待作品に選出。たった1人でアニメーションを制作している。 演劇経験もあり、アフレコもしている。

1980年生まれってことは私よりも年下なんですよね。28歳ということになります。ほとんど同年代なだけに妙にリアルで、何か悔しいなぁ(゚ー゚;
新海誠が29歳で自主制作アニメ「ほしのこえ」を発表したことが吉浦監督を勇気づけたこととは思いますが、吉浦監督は更に次の世代の自主制作アニメ監督として、新海誠とは別の道を切り拓いていっています。

吉浦監督の受賞歴を見ると、日本の自主制作アニメの難しい状況がそのまま見て取れるようで感慨深いのです。ふたたびスタジオ・リッカのプロフィールから引用。

■受賞暦:
2001年/ジャパンデジタルアニメーションフェスティバル2001にてトムシート賞を受賞
2002年/デジタルスタジアムにて伊藤有壱賞受を受賞(デジスタ入り)
2002年/第14回DoGACGアニメコンテストにてアート賞を受賞
2002年/アルスエレクトロニカ2002にてHonoraryMentionを受賞
※同時受賞作品:タイムマシン(ドリームワークス)/ポリゴン家族Ⅱ(ポリゴンピクチャー)等
2003年/第6回文化庁メディア芸術祭にて審査委員会推薦作品に入作
2003年/サンタマニアショートフィルムフェスティバル2003にて審査員奨励賞を受賞
2003年/東京国際アニメフェア2003にてアニメ作品部門 優秀作品賞を受賞
※同時受賞作品:攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(プロダクションIG)等
2003年/DoGA第15回CGアニメコンテストにて作品賞を受賞
2003年/ブロードバンド・アート&コンテンツ・アワードジャパンにて映像コンテンツ最優秀作
2006年/東京国際映画祭にて招待上映
2006年/第1回札幌国際短編映画祭にて脚本賞を受賞
2006年/日本橋映画祭にて日本橋最優秀作品賞を受賞

自主制作アニメを一般に広く発表する場は、今も昔もNHKのデジスタだけです。私も好きな番組なのですが、デジスタで高く評価されるのは、良く言えば作家性が強い作品、悪く言えばお客さんの顔がいまいち見えない作品です。アート系って言うか。この道をひたすら走っても、その先にあるのは「みんなのうた」や教育テレビのミニアニメを担当するという上がり目くらいです。私は「みんなのうた」も教育テレビのミニアニメも大好きなのですが、産業として語るにはあまりにも小さすぎる市場だとも思います。

一方で、DoGAのCGアニメコンテストはCGアニメを普及しようという関西の団体がやっていて、オリジナルの3DCG制作ツールなんかもあって、コンテストの歴史は古いのですが、いかんせん知名度が低すぎです。同じ系譜に連なる日本橋映画祭は、関西の秋葉原的な町である日本橋でんでんタウンが日本橋CGアニメ村構想を掲げて開催したのですが、それほど大きなインパクトを残せませんでした。でも、このDoGAを中心とした陣営が提示する方向性については、私は間違っていないと思っています。すなわち、「3DCGの利用によるアニメ制作の効率化」です。3DCGを使えば、商業レベルのアニメ作品を少人数で少ない資本で制作して世に問うことができるはずだという考え方自体は、間違っていないと思うのです。だから私も3DCGを勉強し続けています。

ただし、3DCGアニメと言っても色々な方法論があって、微妙なバランスの取り方の問題が難しいのです。そして、吉浦康裕監督は、その問題の最適解にたどりつこうとしていると思うのです。

一番分かりやすい3DCGアニメと言えば、「トイ・ストーリー」や「モンスターズ・インク」などのピクサー作品でしょう。ただし、真正面から3DCGの限界に挑戦してクオリティーを上げていくピクサーの手法は、むしろ物量作戦であって、3DCGによる省力化という方向性とは大きく外れてしまいます。あんな毛がもじゃもじゃ生えたキャラクターを3DCGで動かしてレンダリングしてなんて考えただけで怖ろしいです。3DCGは毛の表現が苦手なのです。

対して、キャラクターと世界観の設定の工夫によって、3DCGの得意分野だけの勝負に持ち込もうという努力をしているのが、現在テレビで放送中の「スケアクロウマン」です。私も第2話まで見ました。でも、第3話は見ない気がします。NHK教育のミニアニメの方向性をそのままで30分アニメにしてしまった印象で、正直ずっと見ているのは辛いです。制作しているトムス・エンターテイメントにとっては3DCGアニメのノウハウを蓄積するための実験作なのだと思います。

そして、吉浦監督はというと、「イヴの時間」の前の作品「ペイル・コクーン」の作品紹介に制作スタイルが紹介されていました。引用します。

 大まかな制作スタイルとして、『ペイル・コクーン』は人物を手描きアニメーション(作画用紙に鉛筆)で、背景を手描きと3DCGの混合で表現しています。3Dの背景の上に2Dの絵を乗せるのではなく、両者を使用して一つの絵を描くことを心がけました。

さらりと書いていますが、これってメチャメチャ難しいのです。3DCGによって背景を描画させる際には、パラメータの設定によってタッチを変化させることが出来ます。例えば輪郭線を強調して太く描画するように設定すれば、より漫画的なタッチにすることが出来ます。ただし、あまりやりすぎると安っぽくなってしまったり、「スケアクロウマン」のようにファンシー過ぎる世界観に見えてしまったりします。

一方で、そうやって3DCGで描かれた背景の前で動かす手書きの人物についてもタッチの微妙なさじ加減が求められます。あまりにも平面的な表現だと浮きすぎますし、かといって中途半端に立体的な表現をすると途端に安っぽくなります。

それが、「イヴの世界」では何の違和感もなく一体化しています。しかも、3DCGによる省力化の効果が大きいであろうことは見ていて分かります。重要な舞台のひとつである喫茶店は、ロフトスペースのある少し変わったレイアウトになっていて、あの背景をいちいち手書きしていたら、パースの処理などとにかく面倒で、そもそもあんなレイアウトの設定にしないでしょう。でも、3DCGで作り込んでおけば、あとはどんな角度からの描写も思いのままです。

「イヴの世界」を見て、そんな吉浦監督の手法について「新しい」という反応をしている人がネット上には多かったです。非常に好意的に受け止められていました。

吉浦監督も、自分が新しい制作スタイルを確立しようというしていることを強く意識しているようです。スタジオ・リッカのDIARY2008年9月14日分より引用。

 さぁて、二話公開まであと半月。〆切があると緊張感が増します…はい。で、方々で言われている様子の「二ヶ月なげーよ」ですが…いやごもっとも。色々と悩んだんですよ。この期間はどうなのか、と。  まあこういう話は制作側の都合以外の何者でも無いんですが、一般的なシリーズモノと違って、複数チームを組んで制作している訳でもなく、外注している工程もかなり少ない、いわば家内制手工業的な人数でやっております。二ヶ月ってのがギリギリの線だったんですよね。かと言ってシリーズアニメ並みにワークフローを確立して大人数で制作するのも意味が無いような…。というわけで、この期間内で一生懸命制作しております。どうか、どうか発表スパンにめげず、生温かい目で見守ってくださいまし。

ということで、吉浦監督いわく「家内制手工業」的な制作スタイルで、「作家性」「商業作品としてのクオリティー」「ビジネスとして成立する弾数(たまかず)」とを並立させるギリギリのラインでの勝負をしているまっただ中にあるのです。私たちはアニメの新しい未来が切り拓かれようとする瞬間に立ち会おうとしているのです!

とりあえず私は、アニメーションノートNo.07が「イヴの時間」制作の裏側を取り上げているらしいので購入して、吉浦監督の制作スタイルについてもっと研究しようと思っています。

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そしてそして、私はまだまだ「イヴの時間」について語り足りません!次は、クオリティーの高さについては申し分のない「イヴの時間」が、必ずしも大ブレイクという状況にたどりついていないのが、いくつかの個人ニュースサイトで取り上げられることにより火がつき始めた今の状況とか、クチコミの難しさとか、そのあたりの問題について語りたいです。

衝撃その三「超豪華な声優とか集めて話題になると思いきや個人ニュースサイトのピックアップの方が威力があるとかクチコミって不思議」につづきます。

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