あなたも私も自分探し病 その2
(あなたも私も自分探し病 その1のつづきです)
「自分探しが止まらない」では、我々の世代はみんな、自分探しを社会から強制され続けてきた世代であることを、様々な事例から明らかにしていきます。
我々の世代というのは、『あいのり』世代として区切ることができます。青春時代に放送されていた恋愛バラエティー番組が『あいのり』であるという世代です。もう一方にある世代が『ねるとん紅鯨団』世代。
私は『あいのり』世代です。そして、『あいのり』の本質は恋愛バラエティーではなく自分探しバラエティーであると、「自分探しが止まらない」は分析しています。
私は『あいのり』という番組が大嫌いですが、好むと好まざるとにかかわらず、時代の空気というものは誰もが影響を受けてしまうものです。そして、テレビ番組は時代の空気を映す鏡です。極論すると、我々の世代の全員が自分探し病の患者か予備軍なのです。
『ねるとん紅鯨団』のキーワードは「三高」、『あいのり』のキーワードは「本当の私」、ここに世代間の意識の違いがくっきりと現れます。
「高身長・高学歴・高収入」と恋愛成立の条件を「相手」に求める『ねるとん』に対して、『あいのり』は「本当の私を分かってくれる人」といった具合に、一見すると相手に求める条件のようでいて、じつは「自分」の内面的なことがすべてであるという違いです。
この説明では少し言葉足らずかもしれませんが、『あいのり』世代の人はなるほどと納得してもらえると思います。しかし、『ねるとん紅鯨団』世代より上の世代、40代以上の人には訳が分からないと思います。そう、この感覚を分かってもらえないんです!私が世代間で時々感じていた大きな溝の正体が、ここにあったのでした。
このギャップに気付いた感想を、「自分探し?何それ?」世代の視点から書いているのが、このブログにコメントをくれたこともあるmocoさんこと智子さんです。
I'm智子 こんなことしゆう考えゆう
「探しし物は何ですか〜」
私たち『あいのり』世代は、徹底した自己分析によって自分の適性にぴったりの職業を見つけて、その職業に就くことによって初めて幸せな社会人になれると刷り込まれ続けてきました。というか、刷り込まれてきたという自覚もありません。仕事=自己実現であり、答えは自分の中にあるのであり、就職活動=本当の自分探しであるという考え方に疑問すらわかない状態です。
自分探し病が重症になると、恋愛についても近い考え方をしてしまいます。恋愛=本当の自分探しであり、やっぱり答えは自分の中にあると考えるのです。常に本当の自分とやらを見つめ続け、
「よくよく考えてみたら、私にはこんな一面があると気づいたの。だからあなたとはお別れね。あなたが悪いんじゃないの、あなたを選んだ私は、まだ本当の私じゃなかっただけなの。」となるわけです。
智子さんも含めた「自分探し?何それ?」世代にしてみると、世代間の深い溝を感じる考え方のことでしょう。
問題をややこしくしているのが、この世代間ギャップに気付くチャンスがまず無いということです。「自己分析」という自分探し病キーワードを『あいのり』世代が口にしても、スルーされてしまうのです。
私たちにそのような教育をしたのは、「自分探し?何それ?」世代だからです。ただし、その世代の人たちは、ある種のファンタジーというか、ものの考え方の振れ幅の片方として教えていたつもりで、まさかそこまで本気で私たち世代が信じ込んでくれているとは思ってもいないのだと思われます。
(没個性・画一教育へのアンチテーゼという意味での)「個性重視教育」
をやっていたつもりが、世代を重ねるうちに括弧書きの部分が取れて、
「個性重視教育」
になってしまったのです。
この方向性を推し進めてきた「自分探し?何それ?」世代の人は、せいぜい努力目標くらいのつもりだったことでしょう。自分たちは没個性・画一教育を受けて育ってきたわけですから。
だから、「自己分析」というキーワードを「あいのり」世代が口にしたところで、そこに信仰にも似た過剰なまでの熱量が含まれているとは思ってもみません。文字通りの意味で受け止めて、微妙にずれた言葉のキャッチボールが成立してしまうのです。ある程度の「自己分析」が就職活動に必要なことは間違いないのですから。
相当に丁寧な言葉のキャッチボールをしないと、この微妙な、だけどとても大きなずれに気付くことは出来ません。智子さんは、その機会に恵まれたのだと思われます。
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